海に入っていく瞬間は、人によって感覚がどれだけ違うのだろう。
天候や太陽の位置、波のサイズや水温によっても同じ感覚はないし、慣れた人とそうでない人でも、感覚値はまるで違うのだろう。
飛行機の離陸の瞬間は、墜落したらどうしよう、と嫌な時間として捉える人が多いかもしれない。
旅なれてくると、車輪が地を離れ浮遊した高揚感につつまれ、雲をひたすら抜けていく音とG(Gravity)もあいまって、どこかに引っ張られるような昇天感覚がある。
それは、もしや臨死体験のような感覚なのではないのか、と考えることがある。
ー海に入っていく瞬間。
危険と隣り合わせの海は、自分を律っして臨むことが多い。波を乗り越えてウネリの鼓動を感じとる入水の浮遊した瞬間は、どこか、そんな飛行機の感覚と似ている。
ー高揚感と、危機感とをあわせもった感覚。
そして海からあがり、揺れ動くことのない大地を踏みしめたときに思う。
飛行機の着陸の安堵感にも似て、なにごともなく還ってこれたことに感謝し、そしてウェットから洋服に着替え、車に乗り込んだとき、その爽快なる安堵を、もう一度、実感するのだ。
海へとのぞむ入水の瞬間。
それは、開けた人にしたわからない、不思議な感覚のトビラでもある。
words by Naoko Tanaka
Photo by BLUER
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