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有名課題である「忍者返し」の1級を登るボルダラー
「ボルダリング」とは、クライミングロープをつけて安全確保が必要ないほどの高さの「岩」をロープ、ハーネス等を用いず、クライミングシューズだけで岩を登るクライミングの一形態である。クライミングの「原点」のようなスポーツだ。
ルートは易しいものから難しいものまで、「級」、「段」によってグレード分けされており、簡単なものはジャングルジムのような感覚でヒョイヒョイ登ることができる。
東京の近くにして、日本で一番「有名」、「聖地」とも言えるボルダリングスポットが「御岳エリア」だ。青梅線「御嶽駅」すぐ目の前の多摩川には、ボルダラーの血を騒がせる大小さまざまな岩が並んでいて、全国各地からボルダラーが集まり楽しんでいる。
デラシネ・ボルダー
ボルダリングは、グレードがつけられたルートを登るのが本来の姿だが、たまたま見つけた「岩」を眺め、登れそうなルートを何となく探りながら登ってみるのも面白い。写真は「デラシネ・ボルダー」という高さが2mほどの岩だが、5~6本のルートがある。
クライミングやボルダリングというと腕の力や握力がないとできない、または「腕、握力が鍛えられるスポーツ」と誤解されがちだがそうではない。どちらかというとバランス力や体全体の筋肉、今はやりのコアの筋肉が鍛えられるスポーツなのだ。
実は、ダイエットにうってつけで腕だけが太くなるという事はない。バランスさえ取れていれば腕の力はそれほど必要ないのだ。クライミング後は胴体の、いまだかつて筋肉痛になったことがない部分が痛くなるという不思議な体験をするだろう。
「忍者返し」を前に手順を確認するボルダラー
クライミング全般に言える面白さは、ムーブ(体の動かし方)の善し悪しで「登れる」、「登れない」が決まる。ムーブが巧くいくと「登れなかった」、「登れる気がしなかった」ルートが、いとも簡単に登れてしまったりする。「正解ムーブ」などと言われているが、力のかけ具合、力をかける方向、体重をかける方向、手や足の置き方、置く順番、隠れて見えなかったガバ(ガバッとつかめるつかみやすい所)を発見するなど、体力勝負ではなく頭脳ゲームの要素が多分にあるのだ。身体操作という点では、ヨガに通ずる点もあり、非常に面白いスポーツと言える。
<ボルダリングをする上での注意点を5つ>
(1)登っている人の近くや下には「行かない」、「近づかない」
登っていた人が突然落ちてしまったときに、巻き込まれてお互いが怪我をしてしまうことを防ぐため。登っている人の近くや落下したらぶつかるかもしれない場所には決して近付いてはいけない。
(2)先に登っている人の近くを「うしろから登らない」
登っている人のルートを妨害したり、落ちたら巻き込まれてしまうかもしれないので「うしろ」からは登ってはいけない。上へ上へと登っているように見えても、もしかしたら途中でトラバース(横移動)するルートかもしれないので注意が必要。妨害するのはマナー違反なので順番を待ち、わからない場合は「登ってもいいですか?」と必ず声をかけよう。
(3)岩につけたクライミング「チョーク跡は消す」
ゴミを残さないと同じくらい重要で、最近問題とされているのが、登る際に使うクライミングチョークの跡を岩に残してそのまま帰ってしまう行為である。クライミングをしない人から見れば岩を白く汚しているだけであり、クレームも多い。クライミング禁止エリアにされないためにも、チョークを使った場合はブラシでこするなどして「跡」を残さないようにしよう。
(4)周りの人に「迷惑になる行為はしない」
御岳渓谷は家族連れの観光客、カヌー、釣り人など、アウトドアを愛する人たちが多く集まる場所だ。クライマーだけではないので、登ることに熱中して奇声を発したり、スペースや道をふさいだり、荷物で独占することがないように心がけよう。
(5)入念な「準備運動」と周囲の確認を怠らない
自分自身が怪我をしないように、準備体操は入念に行い、岩を登るときは近くに危険なものがないか、岩から落ちた時を考えて下に危険なものが落ちてないか、周りに人がいないかを注意してから登ろう。
以上を守って、ボルダリングを楽しもう。ボルダリングのベストシーズンは「秋・冬」と言われているが、オールシーズン可能なスポーツである。ただし雨や雪が降ると岩が滑りやすくなってしまうので、天気の悪い日や、雨の降った翌日で岩がまだ濡れている可能性がある場合は登ることができない。
天気のいい週末はお弁当とクライミングシューズを持ってピクニックのような感じで岩と戯れてみてはいかがだろうか!?