東京なら千葉か湘南、ときどき茨城もしくは伊豆。中京圏なら愛知の伊良湖、関西サーファーは和歌山か四国を目指す。
足を運ぶ場所は大きく変わっても、そう変わらないのは日常的なサーフ環境。ほとんどがビーチブレイクで、長い時間を乗れる波ではない。おそらくは10秒に達するかどうか。台風の時など、よほどスペシャルなコンディションに恵まれたとしても、1分を越えてサーフィできる状況とそう簡単には出会えない。
一方、世界最長の波というのがある。南米大陸のペルー北西部にその波はあって、サーフスポットの名称はチカマ。1本の波でサーフできる距離は最良のコンディション時でなんと4キロ! 時間にして5分に達するという(以下の写真がチカマ)。
普段の生活において、4キロを歩き続けることだってそうそうない。今の季節ならきっと汗だく。運動不足なら足腰は、ガクッ、とするかもしれない。
いくら波に乗るからとはいえ、4キロという距離は相当長い。しかもライディング中はサーフボードを踏み込む必要があるので、やっぱり足腰に、くる。というより、4キロのサーフなんて、足腰やら体力と同様、集中力が持つのかどうかすら分からない。
波を乗り終えた後は、いちどビーチへ戻り、テイクオフ・ポジションへ歩いていく。いつものようにパドリングをして戻るというのは、その距離を思えば無謀に過ぎる。ボードを持ってトボトボと数キロの距離を歩き、再び長い波をキャッチするのがココの特徴で、だから3本もいい波をサーフできればカラダ的に大満足となる。
それにしても、どうしてそれほど長い波が発生するのか。理由はひとつ。チカマの地形にある。
波は、岬の先端から湾に沿うかたちで割れていく。海底が砂をかぶったリーフというのも重要な要素となり、規則正しい、安定した波のブレイクを生み出す。もちろん地形は自然がつくりだした天然のモノ。長い長い波も含めて、奇跡と呼びたいくらいの事象なのだ。
肝心なアクセスは残念ながら便利とはいえない。だから海が混雑していないという側面があるのだが、日本からだとペルーの首都リマまで行くのがひと苦労。そこから国内線に乗り換えトゥルヒーヨへ行き、さらに陸路(ローカルバス・レンタカー・タクシー)で1時間ほど移動する必要がある。
街は疲れた田舎町のようで、きっとサーファー以外のトラベラーは来ないと思われる雰囲気。サーファー相手の民宿が数軒あるが、最近になってチカマ ブティック ホテル&スパという欧米風のアコモデーションができた。プールに加えてジャグジーがあり、カラダをあたためながら波チェックも可能。このホテルのおかげで滞在の快適度はグッとあがり、行ってみたい度もググッとあがった。
ペルーといえばアンデス文明。マチュピチュに行ってみたい人は多いと思うけれど、サーファーにとって、マチュピチュ以上に行きたいペルーを代表するディスティネーションがチカマ。グーフィーフッターなら尚のこと。なにせ5分間の波。そんなサーフは、この地球上でチカマ以外に味わうことはできない。