マカハやマリブ、サンオノフレなど、ロングボーダーの聖地と呼ばれる場所はいくつかある。オーストラリア東海岸のヌーサもそのひとつ。見れば瞬時に納得できる波の質に、その理由はある。
とにかく、長い。岬の先からレギュラーの波が延々とブレイクしていく。海底は砂。おそらく地形に沿って砂のバンクがきれいに形成されているのだろう。沖からうねりが入ると、メロウな美しいレギュラーの波がどこまでも割れていくのだ。
今回ヌーサを訪れたのは雑誌オーシャンズの取材のためで、ヌーサフェスティバルとバイロンベイにできたデウス エクス マキナの最新ショップ取材が目的だった。詳細は6月24日発売号に掲載されるので、ぜひご一読をお願いしつつ、ここでは大会以外のヌーサについて書いてみたいと思う。
まず触れておきたいのがヌーサの場所。上述したように、ヌーサはオーストラリアの東海岸にある。国際空港のゴールドコースト空港から北へクルマで2時間ほど。サンシャインコースト市にある人口5万人ほどの小さなビーチタウンだ。
一方、隠れ家的な高級リゾートタウンでもあり、ビーチ界隈にはコンドミニアムが建ち、オープンテラスのカフェやレストランが軒をつらねるなど、落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
しかも自然保護区にあるため、木より高い建築物は建てられない条例があるという。おかげで天を突くような高層ビルが視界に入ることがなく、海から陸を見ても見えるのは木々ばかりで目に優しい。
海岸線もほとんど手がついていない。ボードウォークが敷設されているものの、入り組んだ地形はそのまま。ピークは岩場に近く、サーファーはそこからうねりの向きに狙いを定めてテイクオフをしていく。
photo KENYU
波のクオリティは写真を見ての通り。上の写真が撮影された場所はファーストポイントと呼ばれるところで、駐車場エリアに一番近いメインビーチにあるポイント。
ここの波の質を見るだけでもヌーサの素晴らしさは分かる。けれど、似たような地形が数カ所あるところに、ヌーサの奥深さを感じることができる。たとえるなら南カリフォルニアのトラッセルズが好例になるかもしれない。
トラッセルズはカリフォルニアが誇るサーフスポットで、海底の玉石がキレイな三角波を生み出すことで知られる。このエリア一帯には、アッパー、ロウワー、チャーチという具合にいくつかのピークがあり、そのすべてで良質な三角波が楽しめるのだ。
そうした状況はヌーサにも見られる。地形を示す画像があるが、左端のMAIN BEACHの右端からファーストポイントの波は割れていく。そこから海岸線に沿って北(岬の奥)へトレイルを歩いて行くと、LITTLE COVE、TEA TREE BAY、ALEXANDIA BAYという入り江がいくつもあらわれる。
1週間ほどの滞在中、アクセス至便なファーストポイントは混雑しがちではあった。しかし奥へ行くほどにサーファーの数は減る傾向にあり、カタチの良いレギュラーは十分な数がブレイク。イベントの開催されていない日常なら、もっとサーファーの数は少なく、波をキャッチしやすい環境にあるのだろうという思いが浮かんできた。
訪れたのは3月で、現地は真夏。ボードショーツ1枚でのサーフが可能なほどに温暖で、水の透明度は高いから、水のなかにいることがとにかく心地よい。そして波質はパーフェクト。周囲には緑があふれている。こうした快適な要素をいくつも揃えるのが、ヌーサという土地の特徴だ。
さらにいうなら、この快適感を“良いモノ・善きコト”とする人たちの多さが、ヌーサの独特な空気感を成立させている。
ビーチにはサーファーだけでなく、日焼けを楽しむ水着姿の女性、走りまわる子供たち、海を眺めながら食事をする家族がいつもいて、居住者には移り住んできたリタイア層も少なくない。自然豊かな環境で、豊かな自然と過ごす時間を望んでいる人たちが、このヌーサにはたくさんいるのである。
何よりサンシャインコーストという名称に土地への思いがあふれている。“輝く海岸”という名の通り、ビーチには白砂とコバルトブルーの海が広がり、眩い光が降り注ぐ。漂う雰囲気はヘルシーでピースフル。一度でも滞在すれば、パラダイスという言葉はヌーサにこそ相応しいことを、身に染みて知ることになる。
ロングボーダー、しかもレギュラーなら一度は訪れておきたいヌーサ。出国から現地入りまで10時間近くを要するけれど、行く価値は十分。マカハ、マリブ、サンオノフレにもない、ヌーサでしか味わえないサーフタイムが待っている。
OCEANS
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KENYU
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