Danny Hess by KennyHurtado@visslasurf
広く知られている通り、サーフボードはフォームと呼ばれる発泡剤をベース素材につくられている。軽量で、加工しやすい、といったいくつかの理由からだ。そこを木材でつくってしまう人がいる。しかも日常的に、ブランドまで立ち上げて。
その人こそ、ダニー・ヘス。サンフランシスコの太平洋を眺められる地区、アウターサンセットに拠点を設けて、ヘス・サーフボードを主宰する人物だ。
そして先日、グリーンルームフェスティバルの開催にあわせて2度目の来日。東京・渋谷のライフスタイルショップ『ベイフロー』では、彼がスポンサーを受けるカリフォルニア発のNEWブランド『ヴィスラ』の期間限定店初日に、来日イベントもおこなわれた。
店内にはダニーによるサーフボードがズラリ。ボディサーフ時に使用するハンドプレーンからビッグウェイブ用のガンまでをハンドメイドで手がけるなか、厳選された数種類のモデルがディスプレイされていた(その大半が成約済み!)。
視覚的にもウッディーなボードは目新しく、当たり前ではあるけれど、レールを含めたすべての曲線が美しく創出されており、まるでアート作品のような輝きを放っていた。
聞けば、すべてを木材からスタートさせるという。当然、時間も手間も通常のサーフボードよりかかる。「あっ!」っと失敗すれば修正だって厳しい。それでもウッドを素材に選ぶのはどうしてなのか。そう問うと、「サスティナブルだから」という答えがかえってきた。
「まず、ウッドだと耐久性が違う。単純により長く使うことができるんだよ。気に入ったボードはいつまでも身近においておきたいと思うよね。僕はそういう気持ちに応えられるボードをつくりたいと思っていたんだ」
「乗り味についてはフレックスが大きな特徴かな。サーフボードを機能させるにはフレックスが必要なんだけれど、木材だからよくしなる。結果として、スピード性に違いを出すことができるんだ」
カリフォルニアのベンチュラで海を身近に育ったヘスは、10代でサーフボードをつくりだしていた。その時から短いサーフボードの寿命に疑問を持っていたようだが、確かな解決策を手にしたのは大学卒業後。ファインアートと海洋生物学を専攻したカリフォルニア州立サンタクルーズ校を卒業して向かった、コロラドでのわら俵ハウス建築プロジェクトに参加した時だった。
建築と向き合った「大工のような日々」は木材との関係性を深めてくれた。そして一方、内陸の土地での生活は海への思いを募らせた。
「このまま大工としてコロラドで生活するのか、それとも海の近くへ戻って木材をつかって生計をたてるのか。答えは簡単に出たよね」
そうして選んだ土地が、サンフランシスコ。サーフスポットとして有名なオーシャンビーチのあるアウターサンセット地区だった。
さらに木材への可能性を勉強するためエコなデザインに関するプログラムを用意する建築研究会(San Francisco Institute of Architecture)に通い、サインペインターのジェフ・カンハム、テーブルやベンチといったファニチャーをてがけるルーク・バーテルズらと、マジカルなウッドの創造がおこなわれるウッドショップを構えた。
工房と呼べるこの場所で、ダニーは週に3〜4本のペースでサーフボードをつくる。
「通常のサーフボードよりペースはどうしても遅くなる。工程数が多いからね。それでもオーダーをくれる人は理解をしてくれる。ありがたいことだよね」
サーフボードの寿命が伸びてビジネス的には困らない?
そういった疑問は愚の骨頂のようだ。現在、納品までは8ヶ月待ち。加えて発注はアメリカ国内に限らず、日本、オーストラリア、ヨーロッパと多くの国から寄せられるという。
そして東京でのプロモーション後に奄美大島でプライベートな時間を過ごしたダニーは、再び日常へ舞い戻った。今頃はまた工房にこもり、ウッドによる創造と向き合う日々を過ごしている。
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