ポストカードのような絵が壁面を飾るなか、ひとつのコーナーだけまったく違うテイストの作品が飾られていた。
「今回のベストですよ。次元が違いますね」
そう言ったのはアーティストの花井祐介くん。ファインアートというべき作品を前に舌を巻いていた。
前売り券をソールドアウトさせたグリーンルームフェスティバル。10周年を迎えた今年も赤レンガ倉庫1号館の2Fはエントリー無料のアートスペースとなっていて、国内外の写真家やアーティストの作品に触れることができた。
花井くんも参加アーティストのひとり。大小のサイズの新作を飾っていたその横で、くだんのアーティストはオイルペインティングの作品とスカルプチャーを展示していた。
最初に目に入ったのはスカルプチャー。セメントでできたソープディッシュ(7500円なり!)は、なんと波打つ模様が表現されている。しかも並べられた10個程度の作品すべてが異なる模様。ひとつひとつがハンドメイドでつくられていた。
その横には樹脂によるスカルプチャー。こちらも表面が波打っている。色は赤に見えつつも、光の具合で緑にも見える。そこも計算か? と思いきや、実はそうではなかったらしい。
「横浜にくるまで緑色の作品を作っていたと思ってたんだ。でも設営する時に、『あれ、赤じゃん』って気づいたんだよね(笑)」
そう穏やかに説明してくれたのが、ロサンゼルスからやってきたアレックス・ウエインステイン。マンハッタンビーチに住むサーファーで、2000年代初期からアーティスト活動を積極的に展開。グリーンルームフェスを発展させるうえで大きなヒントを与えた、今はなきアメリカでのアート&ミュージックフェス、ザ・ハプニングにも参加してきた。
そのキャリアや作風から気難しい人かと思いきや、人柄はとってもオープン。来場者の多くが作品の前を素通りし、ポストカードを思わせる作品の前に立ち止まる光景を目にしても「ぜんぜん平気。日本で僕はまったく知られてないから仕方ないよ。今回足を運んだことで日本の状況は分かったから、今後が大切だよね」と前向きな人でもある。
カリフォルニアではサンタモニカのギャラリーなどで個展を催し、そのパンフレットを見ると今回展示しなかった作品がずらり。なかでも樹脂によるスカルプチャーは60インチ(約150センチ)大のモノもあるという圧巻っぷり。トーンは落ち着いていながら、存在感が強烈なのである。
作品はすべて海からインスピレーションを受けるという。グラデーションが美しいオイルペイントによるアートからなどは、波待ち時に目にしている光景を思い起こさせる。そうした作品群は彼のフェイスブックで見られ、またサーフィンの腕前が高いことを示す写真も閲覧できる。
「お、キミもグーフィーか。カリフォルニアはレギュラーの波が多いけど、レフトの波もこっそりあるんだ。こんど来たら一緒にいこう」
なんて、サーフの話になると舌はより滑らかに。とことんオープンなアレックス。滞在中には、今年一番だった鎌倉の波でサーフをして、ご満悦で離日されたのでした。
FACEBOOK
https://www.facebook.com/alex.weinstein.96?fref=ts
BIOGRAPHY
http://lesliesackscontemporary.com/artists/alex-weinstein/bio
Alex Weinstein Crude, 2010 from Leslie Sacks Contemporary on Vimeo.