2012年に劇場公開された『GOING VERTICAL(ゴーイングバーティカル)』がDVDで発売されました。
この作品はサーフィンの歴史の中でも非常に興味深い、1967年に起こったショートボード・レボリューション(革命)の核心に迫った作品です。サーフボードが現在良く使われているショートボードのサイズになったターニングポイントが、このショートボード革命。日本史でいうところの明治維新くらい衝撃的で興味深い時期なのです。
1967年にはじまった革命からほんの2~3年の間に、それまで10フィートあったサーフボードが現在と同じくらいまで短くなったという衝撃は、想像するだけでドキドキしてしまいます。その後80年代前半にトライフィンが登場する10年余りの時期はトランジション(=移行期・過渡期)と呼ばれ、ロングボードからだんだん短くなっていく様々な実験的なボードが世に出た時期です。ここ数年ロングボードでもショートボードでもない中間的なサーフボードをトランジションボードと呼んだりするのも、ここからきているわけです。
では誰がどうやってこの革命を起こしたのでしょう?
一般的にはオーストラリアのボブ・マクタビッシュがカリフォルニアからオーストラリアに移住した稀代の発明家ジョージ・グリノーと共に起こしたという説が有力ですが、同じころパイプラインなどハワイのハードな波を攻めるために、ガンタイプのボードをハワイのディック・ブリュワーがシェイプし始めていた事実も知られています。
この疑問をはっきりさせるべく、両方向から取材し、最後には当事者2人に直接話をさせるというのが、この映画の面白さです。当時そこにいたジェリー・ロペスが間を取り持つところも見ものです。相当な年齢となった2人のレジェンドが、お互いに対していまだ攻撃的なのがやんちゃな感じで最高です。
ストーリーの結末は実際に観ていただくとして、仕上がりとしては当時の貴重なアーカイブと当事者へのインタビューの構成が絶妙で映画としての見応え十分です。と生意気な感想を書きましたが、監督はドキュメンタリー映画で2度アカデミー賞にもノミネートされているというデビッド・ブラッドベリー監督とのこと。
映画を楽しみつつ、サーフィン史上最大と言っても良い歴史の転換点を知るのは全てのサーファーにとって有意義ではないでしょうか。ショートボードが好きな人もトランジションボードが好きな人もルーツが理解できるし、ロングボードが好きな人は1967年以降何が起こったのかを理解すると66年以前がより特別に感じられるようになったりと、サーフィンへの愛が深まるのは間違いありません。
この映画で興味をもったら、66年以前のムービー、67年~70年代のムービーなんかを観直すのをオススメします。更に理解が深まる(深みにはまる?!)ことになるでしょう。個人的にはこの革命を理解してからの映画『ビックウェンズデー』を観直すのをオススメします。
これから寒くなり夏ほど海に行けなくなる方も多いと思います。そんなときこそサーフィンのカルチャーにふれてニヤニヤするのも楽しい時間の過ごし方ではないでしょうか。