同じMサイズのTシャツなのにブランドによって着心地は違うし、同じサイズのスーツだけれど、既製品よりオーダーメイドの方に愛着が湧く。どちらも洋服好きにとってはごく自然な事柄は、そのままサーフボードにも当てはまる。
サーフボードを世に送り出すブランドは、それぞれファッションでいうところのデザイナーを抱え、各々が思うサーフィン観を3次曲線で表現する。ハイファッションの世界で名を馳せる人物もいれば、ドメスティックブランドだって存在する、というように。
当然ながらすべてが正解。何より肝心なのは、どのようなスタイルを楽しみたいのか、という購入側の意識にある。
写真にあるインチ表示された数字は、左から「長さ」「幅」「厚さ」というサーフボードのサイズを示していて、サーフボード制作における要となるもの。これらの数値と、ユーザーの「身長」「体重」「技量」「目指したいサーフスタイル」からシェイパーは自身の経験からご自慢の1本をつくり出す。
「技量」と「スタイル」についてはデジタル化できず、ここにシェイパーの感性があらわれる。ちなみに「For Me」とは自分用に削ったという意味。乗りたいボードを創造してしまうのだから、そのような人はもはや遊びの天才としかいうほかない。
今の時代、世間には多彩なサーフボードの形状が展開されている。あらゆるサーファーの「こんなふうにサーフィンがしたい」という欲求を叶えてくれる時代であって、目指すスタイルによって手にするべき形状は変化する。
だから、まずは既製品でスタートしても、「こんなサーフィンがしたいんだけど……」という欲求が生まれてくるほどに至った時、いきつけのテーラー(=サーフボードブランドまたはサーフショップ)の存在は意味を持つようになる。お互いの顔が見える付き合いを続けると自分では気づけなかった提案をもらうこともあり、新しい楽しみが、生活のもたらされることになる。
※近年では「長さ」「幅」「厚さ」に加えて「浮力」がサーフボード特性を表す数値として加わっている。その内容については、こちらのコラムへ。